訪問美容の始め方を5項目で解説!現役美容師のアドバイスも紹介
髪を切りたくても店舗へ足を運べない高齢者・要介護者の元へ訪問し、カットやシャンプーなどサロン同様の施術を行う「訪問美容師」。深刻化する少子高齢化に伴い、その需要はますます高まると予想されます。
今回は実際に訪問美容で活躍されている美容師の方にお聞きした情報を元に「訪問美容を始める際に実行したい5つのこと」について解説します。訪問美容師として独立を考えている方はぜひ参考にしてください。
Contents
訪問美容を個人で始める際、押さえるべき5項目
訪問美容をいざ始めるとなったとき「何から着手すればいいのか」と頭を悩ませる美容師さんは少なくありません。訪問美容師として独立するためには以下の5つの項目を実行する必要があります。
1.訪問美容に役立つ資格・知識を得る
2.訪問美容で独立するための申請を行う
3.訪問美容に必要な道具を揃える
4.訪問美容で必要な資金を貯める
5.訪問美容の集客・営業方法を考える
訪問美容に役立つ資格や知識、経験を得る
美容師の資格さえあれば訪問美容の活動自体は可能です。しかし寝たきりや車椅子のお客様を安全に施術するため、ある程度の介護知識や要介護の方との接し方は身に着けておきたいところです。
訪問美容師なら受講しておきたい「介護職員初任者研修」
介護職として働く上で必要な基礎知識と実技を身につけるなら「介護職員初任者研修」の受講がおすすめです。介護現場を想定した講義と実技をカリキュラムを通して学ぶことができます。
また修了試験に合格し資格を取得することで、お客様や取引先の病院・施設から信頼されやすくなるメリットもあります。
実技が学べる講習に複数参加する
訪問美容の活動に必要な「施術スキル」「活動方法」を学ぶなら、座学だけでなく実技が経験できるものを、可能であれば1つでなく複数受講するのがおすすめです。
訪問美容の施術はサロンのものと全く異なるため、言葉ではなく実際に手を動かして学べるカリキュラムが望ましいからです。また施術方法にも正解はないため、いくつかの講義を受けて自分が最もしっくりきた手法を選択しましょう。
周囲に寝たきりカットの練習をさせてもらう
訪問美容では場数が物を言います。一度や二度の施術で要介護者向けのカットをマスターすることは難しいので、周囲に練習を依頼しとにかく経験を積むことをおすすめします。
若い方や健常者の方であっても、あえて“寝たきり”や”椅子から立ち上がれない”という設定で練習に付き合ってもらいましょう。
訪問美容へのスキルアップや資格については、以下の記事でもまとめています。
訪問美容における資格・スキルの重要性と訪問美容師が自宅でもできるスキルアップ方法
訪問美容で独立するための申請を行う
次に訪問美容で独立する際に必要な申請や手続きを見ていきましょう。
独立に必要な申請・手続きを行う
訪問美容に限らず、独立する際に必要な手続きとして以下の4つがあります。
・開業届の提出
・国民年金の加入
・国民健康保険の加入
・確定申告の実施
開業届は独立して活動をスタートした1ヶ月以内に税務署へ提出します。事業主としての公的な証明書にもなるため、社会的な信頼を得るという意味でも提出を行いましょう。
訪問美容を始めるうえで届け出が必要な地域かを確認
訪問美容師として活動する地域によっては各自治体への届け出が必要となります。申請せずに施術を行った場合、市の条例に沿って罰則が与えられるため注意が必要です。
関西2府4県の届け出の必要有無を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関西2府4県+α】訪問美容を始めるうえで届出が必要な自治体を徹底調査してみた
訪問美容に必要な道具を揃える
訪問美容ではサロンで使用する道具以外に、訪問美容ならではのアイテムを揃える必要があります。訪問美容にてお客様のカット・シャンプーを行う場合、以下の道具が必要となります。
<カットに必要な道具>
シザーズ、コーム、レザー、バリカン、トリマー、スプレイヤー、ダッカール、ブラシ、スタイリング剤、カットクロス、ネックシャッター、タオル、フェイスブラシ、ベビーパウダー
<シャンプーに必要な道具>
移動式シャンプー台、専用の椅子、お湯(訪問先で借りる)、バケツ、シャンプー剤、シャンプークロス、ドライヤー、タオル
<全般的に必要な道具>
ゴミ袋、養生テープ、養生シート、ガムテープ、手鏡、鏡、スリッパ、コロコロ、延長コード、領収書、おつり、消毒液、使い捨てゴム手袋
参考元:「Roomシャンプー」商品ページ│ガードナー株式会社
また最近では「ルームシャンプー」といった家庭用掃除機を活用した「洗髪器」も登場しており、ベッドや車いすの上でも服を着たまま洗髪・乾燥ができます。
訪問美容に必要な道具については、以下の記事で詳しくまとめてあります。
訪問美容に必要なものリスト保存版!現役プロ2組のおすすめも紹介
訪問美容に移動式シャンプー台は必要?導入のメリットと選ぶ上でのポイント
最初からすべての道具を完璧に揃える必要はない
また道具は最初からすべてのアイテムを完璧に揃える必要はありません。サロン業と掛け持ちするならハサミやコームと言った基本的な道具は兼用でも良いでしょう(ただし使用後は消毒をマメに行う)。
必要な道具数は施術の項目数に応じても変わるので、まずはカットとシャンプーのみに絞って経験を積むのもおすすめです。
訪問美容で必要な資金を把握・貯める
活動をスタートするための資金を集める必要があります。とは言え訪問美容の活動では店舗を構える必要がないため、必要な資金は主に「道具代」となります。
その他にかかる費用として
・セミナー参加費
・資格の取得費用
・チラシ作成など宣伝費
などがありますが、それほど大きな額ではないでしょう。目安としては5~10万円程度の予算で活動をスタートすることが可能です。
助成金・補助金をうまく活用しよう
訪問美容師として独立する際、条件次第では助成金や補助金を受けることができます。使えるものとしては主に以下の5つがあります。
・創業補助金
・生涯現役起業支援助成金
・IT導入補助金
・ものづくり補助金
・持続化補助金
各サービスの内容については以下記事で詳細をまとめています。
訪問美容の集客・営業方法を考える
必要な知識や道具も揃え準備万端。いざ活動を始めよう!となったとき、多くの美容師さんがぶつかる壁が「集客方法」です。どれだけ優れた技術やサービスがあっても、お客さんがいなければビジネスは成り立ちません。
訪問美容として仕事を増やす手法として、以下のような集客方法が考えられます。
・介護施設へのあいさつ回り
・チラシ作成やポスティング
・ホームページやSNSの運用
・ケアマネジャーさんとの人脈づくり
・地域ボランティアへの参加
こちらの記事に実践して欲しい集客方法についてまとめてあるので、ぜひ参考にして自身に合うやり方を模索してみてくださいね。
訪問美容師が実践したい集客アイデアと事前準備とは?タイプ別に紹介
現役訪問美容師からのアドバイス
最後に訪問美容をはじめて5年以上のキャリアをもつ美容師さんに、これから活動を始める方に向けてのアドバイスをお伺いしました。
1.サロン美容師とは「別物」という認識が必要
「美しくするための施術を追求したい」という美容師らしい理想を持って取り組むことは勿論大切ですが、訪問美容の現場ではギャップに戸惑うこともあるかと思います。普段のサロンワークと異なる環境の中で苦労する場面も多々あるからです。
実際に私たちの周りにもそうしたギャップを感じて、残念ながら訪問美容を辞めてしまった美容師さんがいます。
訪問美容は要介護者やお年寄りの方が多くご利用されますし、訪問先もご自宅や施設など様々です。訪問美容師とサロン美容師の仕事は同じようで「別物」と認識した方がいいかもしれません。大変なこともありますがその分サロンワークとは違ったやり甲斐や達成感、喜びが訪問美容にはあります。
2.既に活躍している訪問美容師に相談するのがおすすめ
講習を受けたり道具を揃えたりしたものの、いざ活動するとなると始め方がわからない。そんなお悩みをよく耳にします。実際私たちも開業直後は右も左も分からなかったので、既に訪問美容で活動をされている方にお話を聞き、具体的な進め方や施設を紹介してもらいました。
始めたては1人で考え込まず、まずは訪問美容業界や介護業界の人脈をつくる、あるいは活躍されている方に相談するのがおすすめです。
3.はじめから100点を狙わないことも大切
活動をはじめて5年近くがたつ私たちでさえ、未だに120%満足の施術ができることはそうありません。お客様の様態や施術時間など何もかもがサロンとは大きく異るので、最初からハードルを上げると完璧にできない自分が嫌になってしまう可能性が高いです。
ベストは目指しますが、最初は特に「できなくても次に活かそう」位に構えるのがおすすめです。
まとめ
今回は訪問美容を始める際に実行したい5つのことというテーマで解説しました。今後さらに必要とされるであろう訪問美容師ですが、その活動方法や世間の認知にはまだまだ課題も多いのが現状です。
まだ前例の少ない業界だからこそ、自ら積極的に情報を取りに行こう・経験をつもうという姿勢が大切です。本記事が少しでも参考になれば幸いです。
GOCHOKIでは今回の他にも訪問美容師さんに向けた役立つ情報を随時発信しています。ぜひそちらも覗いてみてくださいね。