訪問美容の料金設定で知っておくべきポイント│あまり相場価格が関係ないのは何故？

訪問美容サービスを始めるにあたり「料金の決め方」に悩む方は少なくないでしょうが、その方法は非常にシンプルです。

今回は、すでに訪問美容師として活躍されている、経歴20年の現役スタイリストの方に「料金設定のポイント」について取材。価格設定の方法や、設定時に知っておきたいポイントなどをお聞きしました。

【この記事でわかること】

①  訪問美容の料金を決める際、参考にすべきもの

➁  競合他社の価格帯が「あまり関係ない」理由

③ 目標値から、料金を決める考え方

④ 料金設定時、「事前に知っておきたいこと」 

取材協力：株式会社WITH　代表取締役　水口 和樹（みずぐちかずき）様

訪問美容の料金は「目標値」「施設の相場価格」「経費」を総合的に判断して設定する

訪問美容の料金を決める際、知っておいた方が良い要素は以下の3点です。

１．同地域の「施設」で訪問美容サービスを受ける場合の相場価格

２．自身の目標額と労働日数

３．経費

１．同地域の「施設」で受ける訪問美容サービスの相場価格

「競合の相場価格は気にしなくていい」と先述しましたが、訪問先が施設や病院の場合には、同エリアの競合他社の価格把握も必要です。

理由としては施設や病院訪問の場合、クライアント（顧客）は利用者ではなく、施設や病院の責任者であることが多いからです。訪問美容サービスの依頼先選びにおいて、実力や信頼関係が必要なのはもちろんですが、価格帯も重要な指標となります。

ちなみに以下が、全国的な「施設訪問・自宅訪問の料金相場」です。

全体的に施設への訪問料金は、自宅訪問に比べ価格が安い傾向にあります。施設や病院でのカットを検討している場合、ぜひ同じエリアの相場価格をチェックしてみてください。

関連記事：訪問美容の料金相場とは？施設と自宅のサービス価格を30社調査した結果

２．自身の目標額と労働日数から算出する

「訪問美容でしっかりと収益を上げたい」という場合には、目標値から逆算して単価を決定する必要があります。目標を達成するために必要な「1訪問あたりの売上」を理解した上で、価格を設定できるためです。

「訪問美容サービス」の目的に「収益化」を考えている方は、ぜひ「目標設定」から逆算する方法を実践してみてください。

３．経費の目処を立てておく

 毎月の経費がいくら発生するかの目処も、事前に立てておきましょう。とは言え「事務所」を構える必要のない個人の訪問美容サービスであれば、一ヶ月の経費はそれほど高くありません。

【訪問美容で必要となる項目】

・交通費（車の維持費、ガソリン代、高速代など）
・消費するものの調達（シャンプーやカラー剤など）
・（複数人の場合は）人件費
・ウェブサイトやチラシなどの維持費・制作費

状況によっても異なりますが、個人の活動であれば「月に2～5万円程度」の経費が一般的でしょう。毎月の収益が安定しない間はとくに、月の経費をなるべく抑える意識が大切です。

また移動式のシャンプー台や訪問美容専門のアイテムなど、開業時の備品購入には多少大きな金額が必要です。目安としては、20万円程度の出費を念頭に置いておきましょう。

関連記事：訪問美容に必要なものリスト保存版！現役プロ２組のおすすめも紹介

訪問美容の料金設定で「競合の相場価格」は、あまり関係ない？

ネットで「訪問美容　料金の決め方」を検索すると、多くのサイトで「同じエリアにある、競合の訪問美容サービスの価格を参考に決める」と紹介されています。

しかし実際には「訪問美容サービスの競合価格」は、それほど意識しなくても問題ありません。理由は訪問美容の依頼先を、価格帯で決めている依頼者は少ないからです。

「身体的に不安のある・外出できないお客様」が、訪問美容師にまず求めるものは「信頼」です。よってお客様が訪問美容サービスを選ぶパターンとしては

・ケアマネージャーからの紹介

・信頼できる人（家族や知人など）の紹介

・訪問美容サイトの口コミを見た

・リピーター（前回の施術が良かったか）

などが自然と多くなります。

過剰に高い・安い料金設定は不自然ですが、競合の価格をそれほど意識する必要はありません。むしろ「価格帯に見合うだけのサービスを提供する」ことに、意識を向けることをおすすめします。

訪問美容の料金設定時、事前に知っておきたいこと３つ

訪問美容師として数多くの実績をもつ「株式会社WITH 代表取締役　水口様」にご協力いただき「これから訪問美容をスタートする人が、事前に知っておくべき良い情報」についてお聞きしました。

1.　キリのよい価格帯を設定すると喜ばれる

料金設定を「税込みで4,000円」など、キリの良い価格帯にするとお客様からは喜ばれます。理由は小銭が発生せず、支払いがスムーズなためです。

ご高齢のお客様・認知症のお客様なども多いため、特に個人宅の訪問では「いかに金銭のやり取りを簡潔に・確実に行うか」が、重要な課題なのです。

キリの良い価格を設定することはお客様のためだけでなく、自身の金銭回収を確実にするというメリットもあります。

2.　競合他社の価格＜お客様からの信頼

先述した通り「競合他社の価格設定」は、あくまで参考程度にとどめておきましょう。そもそも個人・小規模の訪問美容サービスは、大手サービスに価格帯で勝るのは困難です。

価格を意識するよりかは、いかにお客様のサービス選びの基準となる「『訪問美容師』としての自分の信頼性」を上げるかに注力するのがおすすめです。

【お客様が安心して利用するための施策】

・運営するHPに、実際の施術の様子や口コミを掲載する。

・配布チラシに、自分の顔や”ひととなり”がわかる文章を載せ、安心してもらう。

・SNSで普段の施術や訪問美容への思いを発信する。

・予約時の事前説明～アフターフォローまで、丁寧におこなう。

・足が悪い、寝たきり等、お客様の状態を配慮して、柔軟に施術する。

3.　単価を気にするより、ケアマネージャーとの関係作りを優先する

 訪問美容サービスを必要とする「在宅・施設に入っているご高齢の要介護者」と、最も繋がりを持っているのは誰でしょうか。

正解は「ケアマネージャー（介護支援専門員）」です。

それぞれが「介護の必要な高齢のお客様」を複数名受け持っているため、ケアマネージャーと信頼関係を築くことで、訪問カットを必要としているお客様と繋がれる可能性はグッとアップします。ケアマネージャーに間を取り持ってもらうことで、本来「訪問カットを希望するお客様」と「お客様を施術したい美容師」とのマッチングが可能となります。

商売である以上「メニュー単価」の意識はもちろん大切ですが、いま成功している多くの訪問美容師は「信頼できる人脈」を上手く築いている方が多いです。ケアマネージャーとの関係づくりをはじめ、集客の詳しい方法を知りたい方は、以下の記事を読んでみてください。

関連記事：訪問美容師が実践したい集客アイデアと事前準備とは？タイプ別に紹介

まとめ

訪問美容サービスの「料金設定」では、通常のサロンほど他社比較を重視する必要はありません。（ゆくゆく「訪問美容サービス」だけの検索・予約サービスが確立・認知されればわかりませんが、2021年4月の時点では、心配は無さそうです）。

「お客様に満足を与えられる価格帯」という視点から、客観的に料金設定についてに考えてみてください。これから開業される方はもちろん、すでに訪問美容師として活動されている方にも、本記事が参考になれば幸いです。

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