訪問美容が大変な理由とは?現役美容師に聞いた5つの本音を紹介
「訪問美容師は想像以上に大変な仕事」というのは、紛れもない事実です。
サロンワークとはまったく異なる働き方や客層だからこそ、今まで味わったことのないような苦労をすることもあるかもしれません。
その一方、訪問美容師は「大変だけど、それを上回るやりがいが感じられる」と、多くの美容師さんが口にする魅力的な職業でもあります。
この記事では、これから訪問美容師を目指したいという方に知ってほしい「訪問美容ならではの大変なこと」そして「やりがい」について、現役スタイリストさんに聞いたリアルな本音をご紹介します。
【この記事でわかること】
✓ 訪問美容で大変さを感じる瞬間とは?
✓ 訪問美容師がやりがいを感じる瞬間とは?
✓ 訪問美容師として活躍するため、大変さを乗り越える方法とは?
Contents
訪問美容師の何が大変?実際に苦労した経験5つ
まずは現役の訪問美容師さんにお聞きした、業務の中で「特に大変だった」「苦労した」という経験5つをご紹介します。
1.精神・体力的につらいときがある
高齢者や体の不自由な方を中心に施術するため、身体への負担を気にしながらの作業が当たり前の訪問美容師。常に緊張感をもって臨むため、慣れないうちは想像以上に気疲れすることも多いでしょう。
また施設訪問で10名以上のお客様を一度に施術する際や、上体を持ち上げるのが困難なお客様を施術する際など、体力的にハードな現場に直面することも少なくありません。
【訪問美容師さんの声】
寝たきりの方だと施術中はずっとお客様の頭を抱えながらなので、1日に何人も施術すると腰が痛くなります。私は本来、腰が強い方なのですが(笑)
また介護施設認定を受けている病院などでは「ほぼ意識のない方」や「胃ろうをされてる方」もカットするので、時には目を背けたくなったり、ネガティブな気持ちになる場面もあります。
だからこそ施術中は、お客様に少しでも気持ちをあげてもらったり、自分自身のモチベーションをあげるために、積極的に「キレイになりましたね」「サッパリしましたよ」という声かけや笑顔を徹底していますね。
2.最初は慣れない現場で苦労する
サロンワークとはまったく異なる訪問美容師の働き方に、経験豊富なスタイリストさんであっても「最初のうちは苦労しました」という方が大半です。
ある程度の予習をしていったとしても、実際に現場に出てみると「勝手が全く通用しない」「その都度、現場で臨機応変に対処しなければならない」ということも、訪問美容の世界では日常茶飯事です。
【訪問美容師さんの声】
「カットする」というシンプルな施術に、思った以上のレベルが必要な世界であることを痛感しました。現場に出る前も勉強や練習はしているんですが、とにかく求められるスピード感や現場特有の配慮は実践でしか学ぶことができません。
例えば「寝たきりのお客様」の場合、頭を持ち上げて、バリカンを当ててという時間はお客様にとって苦痛な時間です。素早い施術が求められると同時に、頭皮にカサブタのある方も多いので、誤ってバリカンを当てないよう注意を払わなければならない。
特に最初の頃は「準備している知識や経験だけでは、まったく足らない」と感じる場面が多かったです。
3.集客が難しい
多くの訪問美容師さんが苦戦する項目に「集客」があります。
お客様の層が限定的な上、サービスの知名度としても発展途上中の業界であるため、通常のサロンとは集客方法も大きく異なります。
例えばそれまでは「ヘアスタイルのデザイン」を武器に集客をしていたスタイリストさんも、訪問美容では「安心感」や「身体への負担が少ない施術技術」を売りにする方が、顧客のニーズにより合致するかもしれません。
訪問美容の仕事を始めた際は、施術技術の練習と同じくらい集客に力を注ぐことが重要となります。
4.常にお客さんの死と隣り合わせ
訪問美容の世界では「先月担当したお客さんが、昨日亡くなられた」ということが日々、当たり前のように発生します。
訪問美容の仕事を全うするには「常にお客様の死と隣り合わせの仕事である」ことを理解した上で、その辛さを乗り越える精神的な強さが必要となるでしょう。
【訪問美容師さんの声】
毎月訪問させていただいてた施設に、すごく可愛らしいおばあちゃんがいらっしゃって。小さな声で独り言をいいながら、いつも手を握って挨拶してくれる方で。毎回ヘアカットするのを、わたしはもちろん向こうも楽しみにしてくださってました。
それがあるとき、おばあちゃんの姿を見かけなくなって「どうしたんだろう?」と思って施設の方にお聞きしたら、実は体調が急変して、寝たきりの状態になられてたんですね。それでもカットさせてほしいなと思って、おばあちゃんの髪を寝たままの状態で切らせていただきました。
その次に施設にいったときには、すでにおばあちゃんは亡くなられてて。すごく寂しい気持ちになりましたが、最後にカットさせてもらえて良かったなと思いました。
5.人に教わることが難しい
以前に比べると訪問美容師さんの数が増えてきたものの、まだ本格的に取り組まれている方が少ない職種であることも事実です。
サロンと違い誰かにノウハウを1から教わったり、実践に近い環境で練習を積んだりといった事前準備が訪問美容の業界では非常に難しい現状があります。
実際に現役で活動されている訪問美容師さんには、現場に出てから経験を自分なりに積んでいったという方が少なくありません。
【訪問美容師さんの声】
最初はとにかく「経験不足」に悩まされました。これまでと勝手が違うこともあり、お客様に対して僕の方が身構えてしまう。そういうのって、自然と相手にも伝わってしまいます。
また施設や病院に訪問した際に悩んだのが「お客様ご本人は希望されていないけれど、施術をしなければいけない」というケースです。そういった訪問美容でしか経験しえない場面に出くわすと、その度に新たな難しさを痛感ました。
訪問美容の活動の中で、辛くて大変でもやりがいを感じられた瞬間とは?
先述したとおり多くの苦労や辛い経験をともなう訪問美容ですが、一方でそれでも活動を継続したいと思えるような、大きなやりがいが感じられる仕事であるのもまた事実です。
実際に業務の中で「嬉しさ」や「やりがい」を感じた瞬間に関する、訪問美容師さんの声をご紹介します。
1.お客様の一生に、美容師として寄りそえたとき
もう亡くなられたお客様とのエピソードなんですが、もともと彼女はサロンの常連さんだったんです。それが骨折されたのを機に、ずっと自宅へ訪問してカットもシャンプーもさせていただくようになりました。
とても仲の良いお客様で、ガンで寝たきりになられたときもご自宅にマッサージへ行かせていただいたり。亡くなられる1週間前の緊急入院のときも、直接「すぐに病院へ来てほしい」と電話をいただき、その日はマッサージをしながら他愛もない話をしました。
お客様が亡くなられたことは後日に知りました。旦那さんが私を気遣って、言われなかったんですね。
亡くなったご報告をいただいたあと、ご自宅へお線香あげにお邪魔しました。お参りのあとは旦那さんとご飯を食べながら、奥さまの思い出話をしましたね。わたしの妹もお世話になったりと、本当に家族ぐるみで仲良くさせていただいたお客様でした。
美容師という仕事を通して「人の一生に最後まで関わることができる」ということが、私にとってはすごく嬉しかったです。
2.お客様の「可愛くなりたい」をお手伝いできたとき
わたしの担当する施設で、毎回カラーの施術をさせてもらう20代後半~30代前半位の年齢の女性がいます。
毎回カラーの施術を楽しみにしてくれていて、いつも施術終わりに「今度はどんなカラーにしようか?」と、カラーの見本を見ながら楽しく打ち合わせをして帰るんです。
1か月~1か月半後に再訪問すると、彼女はいつも「前回打ち合わせした希望のカラー」を楽しみに覚えてくれていて。こちらも嬉しい気持ちになります。
思うように外出できない中、「可愛くなりたい」というお客様をお手伝いできることは、訪問美容師ならではのやりがいだと思います。
3.施術後、お客様の嬉しそうな笑顔をみたとき
どれだけ苦労が多くても施術後にお客様が喜んでくださる瞬間を見ると、やはり嬉しいなとか、救われたなという気持ち、やりがいを感じることができます。
これまで何度も辞められるタイミングはありましたが、そういった嬉しい瞬間があるからこそ続けてこれたなと感じています。
特に女性のお客様を見ていると、いくつになっても「誰かに褒められること」はすごく大事なことなのだと実感します。カットしたあとに看護師さんやヘルパーさんから「似合ってるよ」「良くなったね」と言われると、お客様がとてもニコニコして元気な表情になられるんですよね。
それをダイレクトに見ることができるのは、とても嬉しいしやりがいだなと思います。
大変さや苦労を乗り越えて、訪問美容師として活動するための方法
訪問美容師は様々な大変さを乗り越えた先に、お客様とのふれあいの中で日常では味わいがたい喜びややりがいを感じられる職業です。
そんな苦労を乗り越え、訪問美容師として活躍するために知っておきたい5つの項目について最後にご紹介します。
1.「最初は上手くいかなくて当然」と割り切る
活動当初は想定通りに進まず、失敗をしたりお客様に迷惑をかけてしまう場面もあることでしょう。
しかしサロンワークと同じで、訪問美容の仕事も最初は上手くいかなくて当たり前。現場を経験しながら徐々に業務に慣れていくのが普通なのです。
最初から「完璧にできなくては」と気張り過ぎず、肩の力を抜いて業務に取り組んで頂きたいなと思います。もし不安な方は施設などに依頼して、最初はボランティアカットなどから活動を始めてみても良いかもしれません。
2.まずは掛け持ちから始めてみる
現在なにかしらの職に就いているなら、まずはその業務と並行して訪問美容の活動ができないかを考えてみてください。
「訪問美容の活動で必ず成功する」と仕事を1本に絞ると、収入的にもリスクが高い上、精神的にも余計なプレッシャーがかかり良くありません。
実際、当社のお付き合いしている訪問美容師さんを見ても、通常のサロンワークと並行しながら訪問美容の活動をされている方が大半です。
訪問美容の活動が軌道にのってきたタイミングで、徐々に仕事の割合を増やす就業スタイルがおすすめです。
3.最低限の道具・メニューで始めてみる
「掛け持ちで始める」と似ているのですが、訪問美容の活動をスタートする際は「とにかくミニマムに、経費をかけずに始めること」が重要です。
まずは実践を通して仕事や集客のノウハウを学び、慣れてきた段階で少しずつメニューの数や道具を増やしていく方が、失敗のリスクが小さいためです。
最初のうちは「メニューはカットのみ」「備品はサロンワークのものを使用する」など、割り切って活動をおこなうことで、精神的な負担が軽減され楽な気持ちで活動に臨むことができるでしょう。
4.周囲に活動を公言する
「訪問美容の活動を本格的にやりたい!」と決めたなら、なるべく多くの人にその旨を報告するのがおすすめです。サロンのお客様はもちろん、友人や身内などにも公言してしまいましょう。
理由としては周囲に伝えておくだけで、新規のお客様獲得に繋がる可能性があるためです。
実際「サロンのお客様に訪問美容のことを話したら、お母さんの訪問カットをお願いされるようになった」「サロンのお客さんが偶然、介護関係のお仕事で、ケアマネージャーさんを紹介していただいた」というケースも少なくないようです。
5.訪問美容師の仲間をつくる
訪問美容ならではの苦労や辛い経験は、おなじ訪問美容師にしか味わうことができません。前向きに訪問美容の活動を続けられている美容師さんには、同じ悩みややりがいを共有できる訪問美容師の仲間やお知り合いがいるケースが多く見受けられます。
【訪問美容師さんの声】
自分と波長の合わないお客様が続いた時は「今日はそういう日なんだな」と自分の中で気持ちを整理するようにしています。
このときは一緒に訪問している仲間が励ましたり声をかけてくれることで、気持ちを持ち直すことができます。
1人だと辛いと思いますが、メンバーとフォローしながら行うことで気持ちも楽になりますし、モチベーションを保ったまま1日の施術を終えることができるので有り難いなと思います。
近年ではSNSも発達し、気軽に面識のない第三者とも繋がれる時代になりました。
訪問美容の仕事を長期にわたり継続する上では、活動について相談できるような、苦労を共有できる訪問美容師の仲間がいると安心です。
まとめ
訪問美容の仕事はやりがいも多い分、想像以上に大変な場面や辛いことも少なくない業界です。
だからこそ活動後に「こんなはずじゃなかった」とならないためにも、あらかじめ苦労を理解した上で、訪問美容の道を目指していただきたいなと思います。皆さんの訪問美容活動を、心から応援しております。
訪問美容サービス「GOCHOKI」では、毎月今回の様な訪問美容に関するお役立ちコラムを配信しております。ぜひあわせてご覧ください。