訪問美容師のボランティア活動とは?内容や始め方・実際のエピソードを紹介します。
髪を自由に切れない人のために、ボランティアとして訪問美容をおこないたいと思いながらも
・「どんな場所」で「誰を対象に」した活動があるのかわからない。
・そもそもどうやってボランティア活動を見つけるのかわからない。
・実際のボランティアの様子はどんな感じなんだろう。
といった疑問から、行動に移せない美容師さんも少なくないのではないでしょうか。
この記事では、実際に訪問美容師としてボランティア活動をされている萩平さまにご協力をいただき、ボランティア活動の種類ややりがい・活動の始め方などについてまとめました。
Contents
訪問美容師のボランティア活動には、どんなものがある?
ひとえに「訪問美容のボランティア活動」といっても、その対象者や訪問先は様々です。
どのような内容のボランティアがあるのか、まずは簡単に見ていきましょう。
1.高齢者施設でのカットボランティア
有料老人ホームやデイサービスといった施設に訪問し、高齢者の方を対象にヘアカットやシャンプーをおこなうボランティア活動です。
ご自身では美容院に足を運べない高齢者や要介護者の皆さんに「髪が短くなってさっぱりした」「久しぶりにオシャレができて楽しい」と、喜んでいただけるやりがいのある活動です。
多くの方がイメージされている「訪問美容の仕事」に最も近い内容かもしれません。
2.児童施設でのカットボランティア
児童養護施設や児童心理治療院のような、18歳以下の子どもを保護している施設でのボランティア活動もあります。
施設で生活している子ども達には、自由なタイミングでヘアカットができない場合があります。そんな子ども達の事情に合わせて、ボランティアではヘアカットやスタイリングのサービスを提供します。自身の見た目に敏感な年頃だからこそ、仕上がりを見て喜んでくれた際の嬉しさはひとしおです。
3.被災地でのカットボランティア
震災や台風といった災害にみまわれた地域に出向き、被災者の方を対象に美容サービスを届けるといったボランティア活動もあります。
避難されている方々が少しでも日常に近い生活を送れるよう、ヘアカットに加えマッサージなどのリラクゼーションサービスを提供するといった内容です。
また美容師ならではの視点から、ドライシャンプーやヘアケア用品・鏡といった”美容”にまつわる物資を支援するといったボランティアをおこなう方もいらっしゃいました。
訪問美容師のボランティア活動の様子とは?現役美容師さんに聞いてみた
続いては「訪問美容のボランティア活動」の実際の様子について、サロンオーナー兼訪問美容師として働く傍ら、ボランティアで訪問カットをされている萩平様に教えて頂きました。
萩平さんのインタビュー
— 萩平さんは現在、施設に入られている子どもさん向けに、訪問カットのボランティアをおこなっているとうかがいました。活動をはじめられたきっかけは何だったんでしょうか?
わたしの場合「阪神淡路大震災」があった頃から、何らかのボランティアをしたいという意識がありました。当時から被災地の小学校に足を運んで、子どもさんの髪を切ったりした経験が、今の活動のきっかけになっていると思います。
日頃から「なにか美容師として貢献できる活動がしたい」という想いがあり、2018年の5月から今のボランティア団体に加わり、子ども向けの訪問カットをおこなうようになりました。
— 訪問ボランティアをされる際、道具や服装はどのような感じですか?
基本的な持ち物としてはハサミやドライヤー・スタイリング剤など、通常の訪問美容時と変わりません。仮に団体としてボランティアに参加される場合、その団体が所有する備品を貸してもらえるケースもあると思います。
服装はTシャツにジーンズのような、とにかく仰々しくないカジュアルなものを着るのがおすすめです。わたしの所属するチームでは団体のTシャツがあるので、それを着用して訪問しています。
— ボランティア活動をされる中で、やりがいを感じた瞬間などはありましたか?
定期的に訪問している施設での出来事ですが、私の都合がつかず3か月ほどカットのボランティアへ参加できなかったとき、ヘアカットをさせてくれる子ども達の中でひとり「(わたしに)髪を切ってもらえなくて寂しい」と言ってくれた子がいたそうです。
それをボランティア仲間づてに聞いたときは、嬉しいなあと思いました。
施設でカットするときはなるべく子ども達に喜んでほしいので、少ない時間の中でも、可能な限り彼らの要望にこたえられるよう意識しています。例えば女の子ならアイロンで巻き髪にしたり、ハーフアップに仕上げてみたり。男の子ならアイロンで波をつけ、ワックスで仕上げてみたり……という具合です。
ふだんのサロンワークとはお客さんの層も希望される施術内容もまったく異なるので、自分としても「サロン業務では学べないことを吸収できる場」として貴重な機会だなと感じています。
— ありがとうございます。最後に「これから訪問美容のボランティアをしたい」という方に、アドバイスをいただけますか?
そうですね。まずは構えすぎず、やってみたい気持ちにしたがって小さなことから取り組んでみていただきたいなと思います。
以前はボランティアをしたくても “どこに問い合わせたらいいか” さえわからない時代でしたけど、いまは髪を切れなくて困っている方の情報やボランティアの募集も、簡単にWEBで見つけることができます。
ボランティアにも様々な団体があるので、まずは気になった募集に勇気をもってコンタクトしてみる。1度参加してみて良ければ続けたらいいし、違った場合でも経験を積むうちに、自分が本当にやりたいことのイメージが固まっていくはずです。
まずはできる活動から始めてみて、ボランティアをしていく中で「自身が思う美容師としての理想の関わり方」を見つけていってほしいなと思います。
ボランティアを通じて少年の背中を押した、訪問美容師さんのエピソード
誰かの日常に彩りを添えたり、人生が変わるきっかけを提供したり。訪問美容のボランティア活動では、ときに誰かの生活にそんな素敵な変化をもたらすことができます。
取材に応じていただいた萩平さまより、所属するボランティア団体の訪問美容師さまが体験されたという「施設の子どもさんとの心が温かくなるエピソード」について教えていただきました。
— 今回はボランティア仲間がとあるイベントのレポートにつづった、印象深いエピソードについてご紹介したいと思います。
(ただし個人のプライバシーを侵害しないこと、個人特定できるような情報を載せないことに留意するため、原文ではなく、私の第三者的な立場で書かせて頂くことをご理解願います)。
便宜上、ボランティア仲間を「Aさん」、エピソードの児童を「Bちゃん」とさせて頂きます。
Aさんは、私よりも長くボランティア・カットに携わっておられます。ボランティア・カットを始めるにあたり2つの目的があったそうです。
1つ目は、美容師として社会に何かしたい。
2つ目は、子供を取り巻く環境を少しでもよくしたい。
児童施設へ行くようになって3つ目の行く意味を見つけたと仰っていました。
Aさんには、ずっと気にかけている存在の Bちゃん がいます。
出会ってから数年以上経ているそうで、最初は前髪を切らせてもらえなかったそうです。
前髪を長く伸ばすことで、心にもシャッターを下ろしているような印象を受けたと仰っていました。
Bちゃんの望んでいないような様子を見て、Aさんは(そんなに嫌な事なら切らなくても・・)と思ったそうですが
施設側としては、Bちゃんを思ってカットを勧めているという理由があり、Bちゃんもその日は少しだけ、前髪を切らせてくれたそうです。
次の機会でも、前回より少し短く切らせてくれたそうですが、その後は続かなかったようで、切りに来てくれる事はいつしか止まったそうです。
その後も、訪問した際にバッタリ出会えると、『また切らせてね』と声を掛け続けていらっしゃったそうです。
そばにいるBちゃんの友達も「切りたくなったら切ると思う」とフォローしてくれたそうです。
何度かその様なやり取りを経たのち、「Aさんに切って欲しい」と指名をしてくれた日が来ました。
それでも、髪を切っている間のクロスの中で、施設の担当の先生と手を繋いでいたことが強く印象に残っているそうです。
やがて月日を経て、一人で座ってカットさせてくれるようになっていた頃には、会話も少しずつしてくれる様になっていったそうです。
『何故、前髪を切らせてくれなかったのか?その理由は未だに分からないけれど、Bちゃんが一つ何かを克服出来たのかも知れません。』と仰っていました。
後日、Bちゃんが以前に在籍していた施設の先生に、「髪を切ってもらえるようになったよ」と報告していたと知らせてもらう機会があったそうです。
以降は、Aさんの言葉で綴りたいと思います。
『6年生になって、やっと前髪が切れるようになった時、
以前の施設の先生に
「髪切れようになってん」と
報告をしてたと聞きました。
「先生、今まで心配かけたね、
でも一歩前へ進んだよ。
克服したよ。」
と言っている様に思えました。
前髪一つのことのようだけど、
身体の一部を切ることを任せて
もらえるって、凄い仕事をしていると
身が引き締まりました。
そんな出来事が、あの子の
一歩前進になれた事が
とても嬉しく思いました。
私達は、カットしながらお話できます。
向かいあってではない近い距離で…。
そんな空気感を施設を出て、
大人になった時に、過去の嬉しかった
記憶の一コマで、普段、当たり前の
ようになっていることも、
ここまで大きくなって生きてきて
よかったと思える人生の一コマ。
The small good thing.
ささやかだけど役にたつこと
この月に1度の美容師の
カットや様々な職業の方の
ささやかな行いが、広まる
ことを願っています。』
— 以上が紹介させて頂きたいAさんのエピソードとなります。
読まれた方の心に何か残るものがあれば、紹介させて頂いて良かったと思います。
有難うございました。
(原文ママ掲載)
訪問美容師としてボランティア活動を始めたい方に3つのアドバイス
この記事を読まれている方の中には「訪問美容師としてボランティア活動をしていきたいものの、一歩踏み出せずにいる」という美容師さんもいらっしゃるでしょう。
萩平さまにお聞きした内容の中から、これから美容師としてボランティアに参加していきたいという方に伝えたい、3つのアドバイスについてお話しします。
1.SNSやWEBで、まずは募集している個人・団体を探す
「ボランティア活動の始め方がわからない」という方は、まずSNSやWEB検索を通じてボランティアの募集をおこなっている個人や団体を探してみてください。
とくにTwitterやFacebookのようなSNSツールではそういったボランティアの募集が、他の媒体に比べ活発におこなわれています。
投稿や写真から過去の活動内容が把握できる上、コンタクトも簡単に取れるため「参加したい」という思いさえあれば、誰でもボランティア活動の一歩を踏み出すことができます。
2.美容師以外の仕事からボランティアを始めてみるのもアリ
仮に訪問美容のボランティア活動が近隣で見つからない場合、どうすればいいのでしょうか。
「誰かの助けになる活動がしたい」という想いが根底にあるならば「美容師業」に固執し過ぎず、まずは何かしらのボランティアに参加するところから、始めてみても良いかもしれません。
ボランティア活動の延長上に訪問美容師として関われる仕事が見つかるかもしれませんし、活動する中で「自分がどういった形で貢献したいのか」「誰を対象に活動したいのか」など、本当にやりたいことが明確化されるためです。
訪問美容師としての参加が難しい場合も、まずは興味をもてる些細なものから取り組んでみてはいかがでしょうか。
3.完璧にやろうとせず、まずは気軽な気持ちから
「大それたことをしよう」と思うほど現実との乖離にとまどい、ときにはショックを受けてしまうこともあるでしょう。
ボランティアを始めるコツは「自分の時間でなにか貢献したい」という素直な気持ちに従い、気楽な気持ちで1歩を踏み出してみることです。最初から完璧にこなす必要もありませんし、向いていないと思えば別の関わり方を考えればよいでしょう。
いま「申し込もうか悩んでいるボランティア活動」があるのであれば、まずは話を聞くところから、1度参加してみるところから始めてみることをおすすめします。
訪問美容師のボランティア活動、まずは気軽に始めてみよう。
今回は「訪問美容師さんのボランティア活動」を題材に、活動の種類や内容・実際に訪問した際のエピソードなどをご紹介しました。
活動を通じて誰かを笑顔にしたり、人生にちょっとした喜びを提供したりと、ボランティアにはやりがいや魅力がぎゅっと詰まっています。
本記事が少しでも皆さんがボランティア活動をスタートする、後押しになれば幸いです。
GOCHOKIでは訪問美容師さんを対象に、ためになるお役立ちコラムを毎月配信しています。ぜひそちらも覗いてみてくださいね。
→ 訪問美容のお役立ちブログを見る
【この記事でご協力いただいた訪問美容師さま】
美容室KOUS
萩平 浩一(ハギヒラ コウイチ)様
サロンで培った経験を活かし、30歳の頃に独立。大阪府堺市にて「美容室KOUS(コーズ)」をオープンし、地域密着型の美容室として長く地元民に親しまれている。
大阪美容生活衛生同業組合の理事や堺西支部長を務めた経験もあり、訪問美容が世間に広く認知される以前から、17年にわたり病院や施設等での施術を行ってきた。また児童養護施設などを対象に、訪問美容のボランティア活動も精力的におこなっている。
サロン名:美容室KOUS(コーズ)
住所:大阪府堺市西区草部335-5
アクセス:富木駅から1.5km(鳳駅から1.6km)
営業時間:9時~19時 / 予約優先制
問い合わせ:072-275-0146