BLOG

訪問美容における「衛生管理要領」を分かりやすくまとめてみた|美容室との違いはあるのか

2020.04.16

訪問美容サービス「GO!CHOKI(ゴーチョキ)」です。

 

皆さんは、「衛生管理要領」という言葉を知っていますか?

美容師経験がある方なら、ご存じの方も多いかもしれませんね。

 

以前公開した、訪問美容を始めるうえで届出が必要な自治体を調査した記事の中で、「衛生管理要領を守って…」という言葉が何度か出てきました。

 

訪問美容の届出を出す必要がない場合でも、この「衛生管理要領」はしっかりと守らなければならないのです。

ですが、国から発表されている資料だと、言い回しが独特で難しかったりするので、「なかなか読む気になれない…」なんて方も、もしかしたらいるかもしれません。

 

そこで今回は、訪問美容と美容所の衛生管理要領の違いについて紹介します。

 

そもそも衛生管理要領って何?

衛生管理要領

まず初めに、「衛生管理要領」とはどういうものなのかについて再確認しましょう。

 

不特定多数の人が利用するサービス業を営む上で、「店内がきれいかどうか」「従業員の服装が整っているかどうか」など、利用する人からしてみれば、衛生面はどうしても気になってしまうものです。

 

業種によって設備や服装などは異なるので、一概に「これが正しい」という答えはありません。

しかし、基準があいまいなままだと、管理不足などによって全体の質が悪くなってしまいます。

 

例えば、美容室の場合

  • ・床が汚れていてお客様が足を滑らせてしまう
  • ・使用済みのカット用具を使い、お客様が皮膚疾患になってしまう

 

などの問題が起こってしまいます。

そのため、全体の質を高めるために業種ごとのルールが規定されました。

 

それを「衛生管理要領」や「衛生管理要綱」と言います。

自治体によって、呼び方が変わることもありますが、内容としては同じものになります。

 

衛生管理要領は「訪問美容」と「美容室」で内容が違う

提供するサービスは美容室・訪問美容共に似通っています(ヘアカット・カラーリング・シャンプー・パーマなど)。

しかし、設備や使用する道具、作業環境などがかなり違うので、訪問美容の衛生管理要領は、美容室の物とは異なる部分が出てきます。

 

本記事では、特に内容が異なる以下の点にフォーカスして、紹介します。

  • 1,作業環境の違い
  • 2,使用する道具(携行品)の違い

 

作業環境に違いはあるが「人や動物がいないことが最低条件」

まず、美容室と訪問美容において、作業環境に関する規定には以下のような違いがあります。

  • 美容室は「隔離・区分されていること」が基準
  • 訪問美容は「人の出入りが少ない場所。専用の作業室があれば望ましい」

 

そして、美容室と訪問美容のどちらにも「施術を行う部屋に動物(身体障害者補助犬を除く)が入らないこと」と、規定されています。

 

◆訪問美容は作業場所が一定でないため最低限の規定がされている

 

美容室の衛生管理要領は、開設時の審査基準に準拠するため、照明や広さ、施設の構造などが細かく指定されています。

一方、訪問美容の場合、作業場所が介護施設や個人宅です。

作業場所によって環境が異なるため、最低限の条件として「人や動物がいないこと」と「作業後には必ず清掃を行うこと」のみが規定されているのです。

 

使用する道具(携行品)における違いは「容器」と「消毒液」

訪問美容は、美容室での施術と違い、使用する道具も訪問先へ持参しなければいけません。

なので、訪問美容の衛生管理要領には、「携行品」という項目が記載されています。

その内容としましては、以下の通りです。

  • ・理容・美容器具一式
  • ・未使用及び使用済みの理容・美容器具を衛生的に保管できる容器
  • ・消毒された布片やタオルとそれを衛生的に保管できる容器
  • ・手洗いの為の消毒液や石鹸
  • ・外傷に対する救急処置に必要な薬品及び衛生材料

 

中には美容室でも必要なものもありますが、特筆すべきは「保管できる容器」と「手洗いの為の消毒液や石鹸」です。

訪問美容では、感染症予防や作業場所を清潔に保つことなどの観点から、美容師自身も作業前・作業後に消毒をし、理容・美容器具を持参した容器に入れておく必要があります。

 

理容・美容器具を保管する容器に関しては、ジップロックやタッパーなど、密閉できる容器が望ましいでしょう。

 

◆その他「アルコール除菌シート」や「手袋」などがあると便利

 

訪問美容師として活動する人の中には、触れたものを簡易的に除菌できる「アルコール除菌シート」を持ち歩く人も多くいます。

お客様の眼鏡などを一旦預かることもあるので、こうした除菌用品を持っておくことがオススメです。

 

もしくは「手袋」をつけて作業することもオススメです。

介護施設でのヘアカットは連続で複数人の髪を切るので、人が変わるたびに消毒をしていては、時間のロスにもなってしまいます。

つけ外しが簡単にできる手袋を用いることで、消毒の繰り返しによるロスを予防することも可能です。

 

消毒など美容室の衛生管理要領に従う部分もある

道具の消毒などは、美容師として最低限やっておくべきところなので、「理容所及び美容所における衛生管理要領(昭和56年6月1日付け環指第95号厚生省環境衛生局長通知)に準じること。」と記載されています。

 

◆自治体によっては衛生管理に関して細かい基準が設けられている

 

厚生省発表の資料では、最低限の条件のみが規定されていますが、各自治体によっては、衛生措置に関する資料を公開していたり、衛生管理に関する講習会を行っていることもあります。

 

例えば、大阪府のWebサイトでは、「出張理容・出張美容を適正に行うために」という資料が公開されており、この中で、衛生措置に関するルールが細かく記載されています。

消毒用エタノールの濃度や、道具を浸す時間なども記載されており、訪問美容を始めるうえで届出が必要ないにせよ、守るべき基準は決して緩いものではないことが分かります。

 

訪問美容師として活動する前には、届出の有無の他、各自治体に設けられた衛生措置に関する基準についても、しっかり把握しておくようにしましょう。

 

訪問美容では「お客様の状態」や「感染症」に気を付ける

感染症 予防

ここまで、美容室と訪問美容の衛生管理要領における、作業環境と携行品に関する違いについて紹介しました。

美容室と訪問美容には、衛生管理要領以外の部分でも、大きな違いがあることをご存じでしょうか?

 

それは「お客様の状態」です。

 

訪問美容サービスの対象者は、「疾病の状態にある場合ほか、骨折、認知症、障害、寝たきり等の要介護状態にある等の状態にある者であって、その状態の程度や生活環境に鑑み、社会通念上、美容所に来ることが困難であると認められるもの」なので、人によっては、入浴すら出来ていない状態にある可能性が考えられます。

 

寝たきりの場合、数日に一度しか入浴できず、髪がかなり汚れていたりするので、予期せぬうちに他の場所に汚れがついてしまっていることがあります。

ですので、作業場を清潔に保つということを考えると、先ほど紹介した「手袋を着用する」もしくは「お店や自宅に帰ってからすぐに消毒する」などの対策が必要です。

 

傷病者の施術をする可能性もあるので、対策はきっちり行う

訪問美容において、傷病者の施術を行う可能性はゼロではありません。

傷病の度合いによっては予約の段階でお断りすることもありますが、「大丈夫だ」と判断できる場合は、施術を行うという美容師もいます。

しかし、パッと見ただけではお客様の体調や傷病の度合いがなかなかわかりません。

 

そこで、GO!CHOKIでは、「訪問美容の施術同意書」として、以下のようなものを作成しました。

あくまでも一例ですが、このようにお客様の状態を確認し、施術に同意いただくことで、施術後に「皮膚トラブルがあるのに無理やり施術された」というようなトラブルを回避することも出来るようになります。

 

現状、訪問美容はどうしても責任の所在が美容師に向いてしまいがちなので、衛生面だけでなく、自分自身を守る手段を持ち合わせておくことも必要です。

 

訪問美容の際は、感染症への対策も忘れずに行う

訪問美容は、訪問先までの移動に電車を使う場合もあります。

飛沫感染や、接触感染をする可能性があるので、気を抜かずマスクを装着し、作業前作業後にはきちんと消毒しましょう。

 

その他、美容師自身が定期的に検温し、自分の状態を把握しておくことでも、「症状に気づかずお客様に感染させてしまうこと」を避けることが出来ます。

 

自分が感染源になってしまう可能性も考慮し、万が一のことが無いように徹底的に予防しましょう。

 

また、現場によっては、床や壁に菌が付着している可能性があります。

お客様と目線を合わせるために床に膝をついてしまい、それがきっかけで感染してしまうこともあるようなので、不用意に床や壁に触れてしまうことが無いようにしましょう。

 

まとめ:衛生管理要領には、似た業種でも明確な違いがあるので適切に対策をしましょう

今回、訪問美容における衛生管理要領について、美容室の衛生管理要領との違いや、訪問美容だからこそ気を付けるべきことについて紹介しました。

 

美容室の衛生管理要領と訪問美容の衛生管理要領は、以下の点で明確な違いがあります。

  • ・作業環境に関する規定(訪問美容の方がアバウト)
  • ・使用道具・携行品(訪問美容は道具を衛生的に保管できる容器が必須)

 

訪問美容は、各現場で作業環境が大きく変わるため、美容室のような細かい取り決めは多くありません。

しかし、自治体によっては、消毒方法などに一定の基準を設けているところもあるので、保健所などに問い合わせて、把握しておきましょう。

 

そして、訪問美容だからこそ、以下の点には特に気を付けなければなりません。

  • ・傷病者への施術を行った際のトラブル
  • ・感染症のリスク

 

訪問美容では、事前準備やトラブル回避の観点から、お客様の体調をしっかりと把握しておくことがとても重要です。

今回紹介した「訪問美容の施術同意書」のような、簡単にお客様の体調や症状の確認ができる書類を活用することもオススメです。

 

また、感染症のリスクは何としても避けなければいけません。

お客様によっては死亡する可能性もあるからです。

 

また、美容師自身が感染症にかかってしまい、仕事が出来なくなるケースも考えられます。

マスクや手袋の着用だけでなく、手洗いによる消毒も欠かさず行うようにしてください。

 

衛生管理を欠かさず、最大限の予防を行って、訪問美容を行っていきましょう。