介護美容とは?仕事内容、資格や美容師との違いについて解説
高齢化が進む中で近年「介護美容」という言葉をよく聞くようになりました。
しかし「介護美容が具体的にどういった仕事を指しているのか、あまりよくわからない」「介護美容に興味があるけれど、どう目指せばいいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
ここでは「介護美容の概要」「介護美容師をするのに必要な資格」などをお伝えします。
美容業界と福祉業界をつなぐ、介護美容師という仕事について理解を深め、将来の選択肢のひとつとして検討していきましょう。
Contents
介護美容とは?
介護美容とは、高齢の方や障がいを持っている方など、介護を必要とする方に美容サービスを届けることをいいます。
ただし、ここでの「美容」は2通りの意味を持っています。
1つは「ヘアカットなどを行う介護美容」、2つ目は「メイクなどを行う介護美容」です。
ヘアカットもメイクも、どちらも「美容」の分野に属しているので、ただ単に「介護美容」といった場合には、どちらを指しているかはっきりしません。
しかし、どちらにも共通して言えることもあります。それは介護の技術が必要になるということです。
「一人での移動が難しい」「身体をじっとさせておくことが難しい」「口頭でのコミュニケーションが難しい」など、介護を必要とする方はひとりひとり違ったニーズを持っています。
カットを行う介護美容師もメイクを行う介護美容師も、そういったニーズに応えながら美容施術をすることが求められます。
本記事では「ヘアカットなどを行う介護美容」「メイクなどを行う介護美容」両方の仕事について簡単に説明した上で、前者(ヘアカット)の介護美容師になるためにはどうすればいいか、を中心に解説していきます。
介護美容の仕事内容
はじめに「カットを行う介護美容」、次に「メイクを行う介護美容」についてお伝えします。
1、カットを行う介護美容
こちらの介護美容では、基本的には通常の美容師と同じ業務を行います。つまり、ヘアカットやカラー、パーマなどです。
一般の美容師と違うのは、対象とする顧客が「介護を要する方々」であること。年齢や状況、持っている病気や障がいなどによって「姿勢保持が難しい」「長い時間座っていられない」など、ひとりひとり違ったニーズに応えなければなりません。
また、介護美容の対象になる方は、基本的に美容室やサロンに足を運ぶことができない状況にあります。
そのため、ほとんどの場合、介護美容師はお客さんの自宅や介護施設などを訪問してカットサービスを行います。そのことから、訪問して介護美容を行う人という意味で「訪問美容師」とも呼ばれます。
どちらかというとこの「訪問美容」という言葉のほうが一般的に使われているので、介護が必要な方にカットサービスを行う介護美容に関心があるのであれば「訪問美容」というキーワードで情報を集めることをおすすめします。
私たちGOCHOKIも、訪問美容カットサービスが必要な方へ訪問美容師を派遣するサービスを行っています。
2、メイクやセラピーなどを行う介護美容
一方で、介護や看護の場で、高齢の方にメイクを施すことも「介護美容」と呼ばれています。
介護施設に入っている方の中には、変わり映えのしない日々の生活や身体機能の衰えなどによって、自身の美容に無頓着になるという方もいらっしゃいます。
そういった方に、メイクセラピストがメイクを施すと、美しいネイルの色や明るくなった自分の顔色を見て、見違えるように朗らかになったり、元気になる方がいらっしゃるそうです。
このようなメイクを施す介護美容は、心のケアとしての効果もあることから「メイクセラピー」とも呼ばれています。
高齢の方にヘアカットを施術する介護美容師・訪問美容師として働くには
それでは、介護の知識が必要とされる訪問美容師(介護美容師)になるには、どういった資格が必要なのでしょうか。
ここでは、ヘアカットを行う訪問美容師(介護美容師)として働くときに必要な資格や活かせる経験についてお伝えします。
必要な資格・条件
訪問美容師(介護美容師)をするためには、「美容師免許」か「理容師免許」が必須です。
厚生労働省、美容師法概要の定義にも「美容師の免許を持たないものは美容を業として行うことはできない」と書いてある通り、美容師・理容師免許を持っていない人は法律上、訪問美容を行うことはできません。
美容師法概要
美容師は「美容を業とする者」をいい、美容師法に基づき厚生労働大臣の免許を得なければならない。
美容師の免許を持たないものは美容を業として行うことはできない。
美容とは「パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」とされている。美容師がコールドパーマネントウェーブ等の行為に伴う美容行為の一環としてカッティングを行うことは美容の範囲に含まれる。
また、女性に対するカッティングはコールドパーマネントウェーブ等の行為との関連を問わず、美容行為の範囲に含まれる。染毛も理容・美容行為に含まれる。業とは反復継続の意思をもって行うことで、有料・無料は問わない。また、美容師が美容を行う場合には器具やタオル等を清潔に保たねばならない。
(引用:美容師法概要、厚生労働省)
美容師免許・理容師免許は、専門学校卒業後、筆記と実技のある国家試験に合格することで取得できます。
ご覧のように、ヘアカット専門の介護美容師になるには、美容師免許もしくは理容師免許の取得は必須です。
介護の経験を活かせる!
訪問美容師(介護美容師)には、美容師としての技術だけでなく、介護のスキルが求められます。
ですので、介護現場の経験がある人は、培った介助スキルや利用者・スタッフとのコミュニケーションスキルを活かすことができます。
たとえば、利用者の自宅に行くときにはケアマネージャーとの連携が必要になりますし、介護施設や病院に訪問するときには介護関係の用語を理解する必要があるでしょう。
訪問美容師(介護美容師)に介護系の資格が必須なわけではありませんが、上記のような介護現場の経験があれば、仕事の時に必ず活用することができます。
訪問美容師として働く際に、持っていると使える資格
訪問美容師として働く際に、必須ではないけれど持っていると使える資格についてお伝えします。
1.介護職員初任者研修
2.訪問福祉理美容師
1.介護職員初任者研修
厚生労働省が定めるカリキュラムを修了し、筆記試験に合格することで取得できる公的資格。介護に関する知識や技術を体系的に学ぶことができます。
受講資格:なし(何歳からでも受講可能)
費用:約5〜15万円
時間:通学で1ヶ月、通信で3ヶ月ほど
学べる内容:
・職務の理解
・介護における尊厳の保持・自立支援
・介護の基本
・介護・福祉サービスの理解と医療との連携
・介護におけるコミュニケーション技術
・老化の理解
・認知症の理解
・障害の理解
・こころとからだのしくみと生活支援技術
ステップアップ:3年間実務経験を積むことで、介護福祉士試験へのチャレンジ資格を得られる
2.訪問福祉理美容師
一般社団法人、日本訪問福祉理美容協会が証明する認定資格。訪問美容の基礎や訪問美容において必要な準備・道具などについての講習を受けることで資格を取得できる。
受講資格:美容師または理容師の国家資格を有する者
費用:25,000円
時間:5時間(10:00~16:00(休憩1時間))
学べる内容:
・訪問美容とは
・福祉、介護、医療等の基礎知識
・訪問美容の準備、道具の取り扱い、施術時の注意
・高齢者とのコミュニケーション、消毒、感染症等
以上が訪問美容師として働く際に、必須ではないけれど持っていると使える資格です。積極的に取得してみてはいかがでしょうか?
訪問美容師と一般的な美容師の違い
訪問美容師(介護美容師)は、高齢や病気などが理由で美容室に来られない人を対象に美容サービスを行います。
そのため「健康状態の確認」や「衛生面の徹底」「認知症などの症状を持つお客さんへの対処」「ご家族、介助者、施設スタッフとのコミュニケーション」など、通常の美容師業にはない業務をこなす必要があります。
一方で残業や休日出勤の点においては、通常の美容師業と異なるといわれています。
なぜなら、利用者の自宅や病院、介護施設で仕事を行う都合から、残業も休日出勤も少なくなる傾向にあるからです。
最近は減ってきてはいますが、通常のサロンワークだと、サロンによっては残業、休日出勤が多いサロンもあります。ですが、訪問美容師であれば、無理なく働ける可能性は高いでしょう。
また、給与面については、東京や関西などの都心部では、時給1,500円前後、日給1万円前後、月給20万円以上ある求人が見つかります。
今後の日本の高齢社会を見据えても、訪問美容によるヘアカットは、ますます需要が高まると期待されています。
以上から「介護の経験を活かして、訪問美容師を目指す」というキャリアステップも考えるのも良いのではないでしょうか。
まとめ
ここまで「介護美容とは」「訪問美容師とは」「訪問美容師になるために必要な資格」をお伝えしてきました。
訪問美容師は、今後も需要が高まっていく職業のひとつです。介護現場での経験をお持ちであれば、その経験を必ず活かすことができるでしょう。
私たち訪問美容のGOCHOKIにも、介護の知識や経験を活かして訪問美容師をされている方が多くいます。
高齢の方や病気の方、介護を必要とする方に美容を届ける「訪問美容師」を、あなたも目指してみませんか?