美容室の生存競争を生き抜くための経営戦略、4つの型|美容室オーナー様向け
美容室の数は、2019年から2021年のたった3年間で、254,422店舗から264,223店舗と、約1万店舗も増えています。
参考:厚生労働省、令和3年度衛生行政報告例
美容室が増えていき、顧客の取り合いや価格競争も激化する中で、どのようにすれば美容室は生き残っていけるのでしょうか?
本記事では
・美容室・ヘアサロンを取り巻く現在の状況
・価格競争、過当競争を生き抜いていくために必要な3つの対策
・経営戦略の立て方|美容室経営の4つの型
をお伝えします。
ぜひあなたの美容室経営の参考にしてみてください。
Contents
美容室・ヘアサロンの生き残り競争は今後どうなる?
美容業界は長らく過当競争の状態(競合が多く、価格競争などが激化しやすい状態)にあり、近年その傾向はさらに激化していると言われています。
先ほどもお伝えしたように、国内の美容室数は26万店舗を超えており、過去最大の数になりました。
また、美容室数が上昇しているだけでなく、お客様がカットやパーマなどの美容に使うお金は減少傾向にあります。
具体的には、2009年には年間一人当たり10,938円だったものが、2017年には年間一人当たり9,249円に落ちています。
参考:今日から実践!収益力の向上に向けた取組みのヒント 総務省「家計調査年報」
店舗数が増え、美容への支出が減少している現代。
美容室が生き残るためには、他の美容室に負けない魅力を打ち出す差別化、お金を払う価値があると思ってもらえるブランディングをしていく必要があります。
現実には、そういった差別化やブランディング、経営などがうまくいかず、廃業してしまう美容室もある一方で、人気が衰えず繁盛し続ける人気店もあります。
廃業になってしまう美容室と人気を保ち続ける繁盛店には、違いがあります。どういった違いがあるのか、次章からご紹介いたします。
価格競争、過当競争を生き抜くために必要な対策3つ
競争を生き残る美容室は、サービスの質が高いということだけでなく、経営や広報の点でも工夫を続けています。
ここでは、以下の対策3つについてお伝えします。
①経営の方向性を決める
②スタッフの質を高める
③宣伝、広報を工夫する
①経営の方向性を決める
売上を上げ続けるためには、経営の方向性を定め、計画的に経営・広報をしていく必要があります。
そこでは、マーケティングの視点が重要になります。
低価格でリーズナブルな美容室と、高価格でハイブランドな美容室では、経営の方向性が異なります。
もし、あなたの美容室が立地や顧客層から、低価格で多くのお客様に来てもらった方がいいのであれば、前者(低価格でリーズナブルな美容室)を目指す方がうまくいくかもしれません。
一方で「自分の美容スキルを使って、ハイブランドな美容室にしていきたい」という思いがあるのであれば、その目標に向けて後者(高価格でハイブランドな美容室)を目指していく必要があるでしょう。
「顧客ターゲットを考え、経営の方向性を決める」という対策は、美容室としての生き残りを考えるのであれば、深く考えておきたいポイントです。
経営戦略についてのさらに詳しい情報は後述します。
②スタッフの質を高める
美容室は「お店で選ぶ」から「美容師で選ぶ」という考え方が主流になってきています。
美容師スタッフの質を高めることで、お客様の心をつかみ、リピーターとなっていただくことができるでしょう。
この対策方法は、王道の対策方法と言えると思います。
ですが、営業の忙しさや余裕のなさの中で、しっかりとスタッフ教育、スタッフ研修ができていない美容室も少なくありません。
働いてくれている美容師のことを大切にし、しっかりとした教育を行うことで、結果として競争を生き抜ける美容室にしていくことができるでしょう。
参考:美容室が暇な月はいつ?美容師が閑散期に取り組めること5選
③宣伝・広報を工夫する
現代において、SNSやホームページ、YouTubeなどのweb集客は欠かせません。
また、先ほどもお伝えしたように美容室は「美容師で選ぶ」時代になっています。
インスタグラムなどで、ひとりひとりの美容師のタイプや得意なサービスなどをアピールしておくことで
「インスタで見た、この美容師さんにカットしてもらいたい」
「この美容師さんのカラーの色味が好きだから、担当してもらいたい」
など、集客効果が見込めます。
それだけでなく、SNSやホームページでお客様から寄せられるコメントにこまめに返信することで
「ここの美容室は親切そう」
「ちゃんと対応してくれそう」
「丁寧にサービスしてくれそう」
といった好印象にもつながります。
若者の多くがデジタルネイティブ(子どもの頃からインターネットに親しんでいる人)となっている今、ネットを使った宣伝・ブランディングを欠かさずするようにしましょう。
経営戦略の立て方|美容室経営の4つの型
先述のように、競争を生き残る美容室となっていくためには、顧客ターゲットを考え、美容室の方針を決めていく必要があります。
ここではまず「顧客ターゲットを考える」ことについてお話した後、今後の美容室経営において考えられる、以下の4つの型についてお伝えします。
1.低価格・リーズナブル型
2.高級・ハイブランド型
3.多角型経営・総合サービス型
4.高齢者対象・訪問美容型
顧客ターゲットを考える
顧客ターゲットを考えることで、美容室の経営方針が定まってきます。
例1
・低価格を売りにして、多くのお客様(美容にあまり支出しない人たち)に利用してもらいたい
・立地的に、美容にお金をあまりかけないサラリーマンやファミリー層を対象にする必要がある
↓
顧客ターゲット:低価格な美容サービスを求めている人たち(サラリーマン、ファミリー層、高齢者など)
→経営方針:低価格・リーズナブル型
例2
・将来的に、ハイブランドな美容室にしていきたい
・立地的に、美容にお金をかける人が多い
↓
顧客ターゲット:セレブや、美容に関心がありお金をかけられる人
→経営方針:高級・ハイブランド型
例3
・エステやマッサージなど、従来のカットやカラー、パーマ以外のサービスもお客様に提供していきたい
・お客様から「カットやカラーだけでなくエステなどもしてほしい」という要望が多い
↓
顧客ターゲット:ワンストップで多様な美容サービスを受けたい人
→経営方針:多角型経営・総合サービス型
例4
・新しい美容サービスの軸を考えたい
・今後の需要が高まる分野に進出したい
・立地的に、高齢の方が多い
↓
顧客ターゲット:自分で美容室を訪れることが難しい高齢者
→経営方針:高齢者対象・訪問美容型
このように、自分の美容室経営に対する思いや立地、現在のお客様のタイプなどを考慮することで、あなたの美容室に合った経営方針が見えてくるはずです。
以下では、ここでご紹介した4つの経営の型についてさらにお伝えします。
①低価格・リーズナブル型
10分1,000円など「早くて安い!」を売りにしている理美容室などが、この低価格・リーズナブル型にあてはまります。
クイックカットとも呼ばれる、こうしたサービスは「美容サービスにあまりお金はかけたくないが、身だしなみとしてヘアカットをしてほしい」といった層に需要があります。
この経営方針を取る場合、クイックカットの技術が必要になります。
また、売上目標達成のために数をこなす必要があるので
「月当たりの目標金額を1日で割ると、1日あたり何人に来てもらう必要があるか」
「多くのお客様が来てくれる立地かどうか」
といったこともあらかじめ計算に入れておきましょう。
②高級・ハイブランド型
都会の中で人気美容室が多く存在するエリアでは、芸能人やセレブの人たちをメインターゲットにする高級・ハイブランド型の美容室が多くあります。
こういった美容室では、単純なカットの技術だけでなく、これまでの実績や接客、サービス、ファッションセンス、人間性といった能力も問われます。
美容師としての高い能力が求められますが、お客様一人当たりの単価が高くなるので数をこなす必要がなく、ひとりひとりに丁寧に接客することができます。
高級・ハイブランド型の美容室を目指すのであれば、美容師としての実績・技術を高めつつ、日頃からセルフブランディングを行っていくことが大切です。
③多角型経営・総合サービス型
美容に関する事業を行う企業は、近年この多角型経営・総合サービス型の施設を展開するところも増えてきています。
こういった施設の強みは、美容に関心があるお客様の多様なニーズに、ワンストップで応えられるということです。
一例をあげると、エステ、マッサージ、ネイル、ウィッグ、カフェ、ファッション、ジム、ペットのグルーミングなど、実に多様なサービスが提供されています。
個人の美容室ではなかなかここまではできないと思いますが、カットやカラーに加え、エステやマッサージを提供している個人経営の美容室も最近増えてきています。
「お客様の複数のニーズに応えられる」ということは、そのお客様にとって「替えのきかない美容室」になることを意味します。
そうなれば、今まで以上に心強いリピーターとして、あなたのお店に通ってくれるでしょう。
あなたやあなたの美容室のスタッフに、そういったスキルや知識がある人がいて、需要が見込めるのであれば挑戦してみる価値はあります。
④高齢者対象・訪問美容型
高齢の方が増え続ける中で、注目されているのが「訪問美容」というサービスです。
訪問美容では、介護認定を受けた高齢者や怪我をしている人、子育て中の方などのお家や施設に訪問し、美容サービスを提供することができます。
理容師か美容師の資格を持っていれば福祉の資格はなくても、訪問美容師になることは可能です。
訪問美容では「美容室に来ることができない人」がターゲットになります。
つまり、これまでリーチできていなかった層にリーチできるということです。
通常の営業とは異なる、新たな収入の軸として、考えていくことができます。
ただし、訪問美容では介護の知識などが求められます。
参入を検討する場合には、そういった知識や技術を身につけていく必要があることを認識しておきましょう。
参考:訪問美容を始める美容室オーナー様へ|仕事内容やメリットを紹介
まとめ
ここまで「美容室の生き残り競争の今後」「競争を生き抜くために必要な対策3つ」「経営戦略の立て方|美容室経営の4つの型」をお伝えしてきました。
美容室の店舗数が増え続ける現代。
美容室として競争を生き抜くためには、なんらかの方向性を持ったブランディングをし、他店舗と差をつけていくことが大切です。
その方向性のひとつに、今後確実に需要が高まるであろう「訪問美容」があります。
当サイト「GOCHOKI」では、訪問美容師になりたい方に役立つ内容の記事を多数掲載しています。
美容室経営の新たな軸のひとつとして「訪問美容」に興味がある美容師さんは、ぜひ参考にしてみてください。