兄弟姉妹で親の介護を分担する方法は?トラブルを回避するための対策3選
「親の介護を、兄弟姉妹でどう分担すればいいのだろう?」
「親の介護が必要になったとき、どうやって役割分担をしていけばいいのか」
親が高齢になり、上記のように悩んでいる人も多いと思います。
近年は介護サービスや福祉施設などが増えて介護に関する支援が充実してきたとはいえ、兄弟姉妹で協力して介護をするのはなかなか難しいものです。
法的には兄弟姉妹全員に扶養の義務がありますが、「親の近くにいる子どもが介護を一手に引き受けている」という状況も少なくありません。
そこでこの記事では、兄弟姉妹で介護の役割分担を相談する方法や、兄弟姉妹間で起こりやすいトラブルとその対処法についてお伝えします。
Contents
親の介護における子どもの義務
親の介護に関して、民法では以下のように定められています。
第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。 |
介護は、ここで言われている扶養の義務に当てはまります。
また、「直系血族及び兄弟姉妹」には基本的に、要介護者(介護が必要な人)の祖父母、父母、配偶者、兄弟姉妹、子、孫までが入ります。
この扶養の義務は強制ではありませんが、介護の必要性を知りながら意図的に放置していた場合には罪に問われることもあります。
(保護責任者遺棄等) 第二百十八条 老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。引用:E-GOV「刑法 第二百十八条」 |
このように、親の介護は直系血族及び兄弟姉妹の義務、つまり介護が必要な人の子ども全員の義務として法的に定義されています。
そのため介護の役割分担や費用の分担は、兄弟姉妹全員でしていくことが必要になります。
兄弟姉妹での役割分担の相談方法、決め方
介護の役割分担を行うには、兄弟姉妹間で話し合える場を作ることが大切です。
また、話し合うときには、事前に話し合う内容をある程度決めておき、できるだけ冷静に話し合える環境を作る必要があります。
ここでは、兄弟姉妹間での話し合いにおいてどのような内容を話し合うべきか、お伝えします。
①介護に対する本音を話し合う場を作る
親の介護については、状況が差し迫るまでなかなか本音で話し合う場を持てないことが多いでしょう。
だからこそ、介護の必要性が高まったらすぐに兄弟姉妹で話し合う機会を持ちましょう。
その際「介護負担を避けたい」という気持ちから探り合いのような会話になってしまうと、役割分担をうまく決めていくことができません。
そのため、はじめに「みんなで、介護に対する正直な気持ちをそれぞれが話そう」と切り出し、お互いの生活の大変さを知り合った上で話し合いを進めていけるとよいでしょう。
介護において、まず一番初めに話し合わなければならないのは「介護の方向性」です。
介護の方向性を立てるために、以下の5点をまず話し合いましょう。
・親の希望の確認と、現実性の検討
・在宅介護を中心とするのか
・施設入居を目指すのか
・介護サービスの利用頻度、利用料について
・介護サービス利用について、どこの地域包括支援センターに相談するか
参考:
地域包括支援センターとは 大阪市「地域包括支援センター(高齢者相談窓口)」
厚生労働省「全国の地域包括支援センターの一覧(都道府県のホームページへリンク)」
厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム」
介護の方向性の話し合いでは「今後どのように介護していくか」ということに加え、「介護の費用」についても話しておきましょう。
特に、在宅介護と施設入居では費用が大きく違います。
介護の身体的・精神的負担と経済的負担のバランスを考えて、方向性を決めていく必要があります。
②兄弟姉妹それぞれのできること、できないことを確認する
介護に関して「日々どういった介護が発生するのか」「月々どのくらいの費用がかかるのか」といったことを明確にし、兄弟姉妹ひとりひとりがどこを負担するのか話し合いましょう。
「遠方に住んでいるから、経済的なサポートならできる」「近くに住んでいるから日々の介護に協力できる」など、兄弟姉妹の状況によって、できること・できないことがあるはずです。
具体的に、誰がどのような負担を担うのかが見えてくると、お互いに協力する気持ちが湧きやすくなるでしょう。
③役割分担を相談する
介護の方向性や、兄弟姉妹それぞれのできることが分かってきたら、介護の役割分担を具体的に決めていきましょう。
まず、介護に時間と労力を割くことができる立場の人はキーパーソンとなります。
キーパーソンは、中心となって介護を行う人物なので、日々の身体的・精神的負担は大きくなるといえるでしょう。
キーパーソンの作業:
ケアマネージャーや介護サービススタッフとの連絡、毎日の介護スケジュールの構築、食事・トイレや入浴介助などの介護全般
キーパーソンには介護の負担が大きくかかるので、それ以外の人はキーパーソンの負担を軽くするような役割を持つ必要があります。
例えば、以下のような役割が考えられます。
・介護費用の負担
・週末や休日、動ける日に介護を行う
・介護用品や生活用品、食料などの買い出し
・通院や施設利用のとき車を出す
・定期的に親に電話をかけて会話の相手をする
など
キーパーソンの介護負担を認識してそのサポートができるよう、兄弟姉妹の情報共有では「誰がどのような介護を行っているのか」「それにどのくらい費用がかかっているのか」具体的に分かるようにしておくことをオススメします。
また、普段動けない人でも、介護休業や介護休暇などを使うことによって、短期間でも介護にしっかり関わることができます。
その間キーパーソンはリフレッシュする時間を取るなど、介護の協力体制を作っていきましょう。
介護休業、介護休暇について詳しくは以下のコラム「1.1 介護休業制度を利用する」をご覧ください。
介護しながら働くことはできる?仕事を続けるための支援・サービスを紹介
親の介護に関する兄弟姉妹間のトラブルと原因、対処法
介護の役割分担の話し合いでは、兄弟姉妹間でしばしばトラブルが起こります。
ここでは起こりやすいトラブルとその原因、対処法についてお伝えします。
介護負担の偏り
起こりやすい介護トラブルのひとつに、主に介護を行っている人(キーパーソン)に介護負担が集中することで、兄弟姉妹間の関係性が悪くなってしまうことが挙げられます。
このトラブルの原因には「介護の大変さが共有されていない」という問題があります。
特に、介護に関わっていない人は介護の大変さが分からず、介護者の身体的・精神的疲労を想像できていないことがあります。
対処法としては、話し合いや情報共有のときに「日々どのような作業が発生しているのか」「それに対してどのような費用が発生しているのか」をお互いにわかるようにしておくことが挙げられます。
「日々の介護スケジュールを立てるとき、データで作成して共有する」「毎月の介護内容と費用をまとめて、情報共有する役割の人を作る」など、介護においてどれだけの負担が発生しているのか、兄弟姉妹間で見えるようにすることでトラブルの予防となるでしょう。
介護費用の分担
中心になって介護を行っている人は「これだけ頑張って介護をしているのだから介護費用は他の兄弟姉妹に負担してほしい」と思うでしょう。
しかしその時、介護の大変さをよく知らない人が兄弟姉妹の中にいると「費用は兄弟姉妹で均等に分担しよう」と言うかもしれません。
介護にはかなりの費用がかかるので、金銭的な問題はしばしばトラブルの元になります。
このトラブルの原因もまた、介護への無理解があるといえるでしょう。
「介護費用について事前に具体的に話し合っておく」「介護費用をデータ化する」「費用の管理を担当する役割の人を作る」など、介護費用を兄弟姉妹間で見えるようにしておくことでトラブルの予防になります。
兄弟姉妹全員に、介護にはたくさんの労力とお金がかかることを認識してもらい、適切な費用の分担を相談していきましょう。
親の介護を兄弟姉妹で行うとき、利用できる3種類のサービス
兄弟姉妹で協力して、親の介護を在宅で行う場合、以下のことを念頭に進めていく必要があります。
・市区町村か地域包括支援センター*1に、介護保険の申請をして要介護認定を受ける
・最寄りの地域包括支援センター*1で、ケアマネージャーに介護サービスの利用を相談する
・自宅介護の初期費用の平均は74万円。ただし、15万円未満で済んでいる世帯も34%ある。*2
・自宅介護の月額費用は平均4.8万円。*2
*1参考:厚生労働省「全国の地域包括支援センターの一覧(都道府県のホームページへリンク)」
*2参考:公益財団法人生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」173、174ページ
自宅での介護で利用できる介護サービス
介護サービスは、大きく分けて以下のような種類があります。
・自宅に訪問してくれるもの
・施設に通所するもの
・短期間、宿泊させてくれるもの
・施設で生活させてくれるもの
ここでは、自宅での介護で利用しやすい「自宅に訪問してくれるもの」「施設に通所するもの」について主に紹介します。
補足:
あなたのお住まいの地域での介護サービス利用については、最寄りの地域包括支援センター*のケアマネージャーが最も詳しいでしょう。
要支援度、要介護度によっても、利用できるサービスが変わってくるので、わからないことがあったらケアマネージャーさんに相談してみましょう。
*参考:厚生労働省「全国の地域包括支援センターの一覧(都道府県のホームページへリンク)」
①自宅に訪問してくれるもの
自宅に訪問してくれる介護サービスは以下のようなものがあり、訪問介護員(ホームヘルパー)や看護師が担当してくれます。
・訪問介護(ホームヘルプ)
・訪問入浴
・訪問看護
・訪問リハビリ
・夜間対応型訪問介護
・定期巡回・臨時対応型訪問介護看護
参考:厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム」
訪問◯◯と名前のつくものは、その名の通り自宅まで訪問して介護を行ってくれます。
そのサービス内容は主に、食事、排泄、入浴などの身体介護、掃除、洗濯、買い物、調理などの生活援助です。
訪問看護では、その人の疾患に合わせた対応を訪問看護師が行ってくれます。
②施設に通所するもの
施設に通所するものには以下のような介護サービスがあります。
・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリ
・地域密着型通所介護
・療養通所介護
・認知症対応型通所介護
通所介護は主に日中の間、介護の必要な方を受け入れてもらうサービスになります。
自宅での介護をしていると介護者はどうしても付きっきりになり、なかなか気が休まるときがありません。
通所介護を利用することで、ひととき1人の時間を持つことができます。
また、通所については「迎車サービスがあれば利用する」「兄弟姉妹に車を出せる人がいれば協力してもらう」といった方法があります。
参考:厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム」
③散髪や食事のために利用できる介護保険外のサービス
上記で示した訪問看護・介護や通所介護を利用することに加え、訪問美容のような介護保険外のサービスを利用することもできます。
・訪問美容
「親の洗髪やヘアカットをプロに頼みたい」という方は、訪問美容というサービスが利用できます。
訪問美容とは、認知症や歩行困難などで美容室に足を運ぶことが難しい方のところに、プロの美容師が訪問して散髪を行うサービスです。
訪問美容では、主に以下のようなサービスを受けることができます。
<訪問美容メニュー>
カット
ブロー
シャンプー
お顔のお手入れ
パーマ
白髪染め、カラー
トリートメント
まとめ
ここまで、「兄弟姉妹での役割分担の相談方法」や「兄弟姉妹間で起こりやすいトラブルとその対処法」について主にお伝えしました。
住んでいる場所も状況も異なると、兄弟姉妹間で介護に対する考えも少しずつ違ってきます。
しかし、介護負担や費用負担に関する話し合いや情報共有を行うことで、「介護は思っていたよりも大変なんだ」「介護には思ったよりもお金がかかるんだ」と、正しい認識を持ってもらうことができるでしょう。
身体的・精神的負担が大きくなりすぎないよう、兄弟姉妹はもちろん、介護サービスに詳しい地域包括支援センターにも相談しながら、みんなで協力して介護をしていきましょう。
当サイト「GOCHOKI」では、「自宅での介護で利用できる介護サービス」でお伝えした訪問美容に興味がある方に役立つ内容の記事を多数掲載しています。
訪問美容についてより詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。